ちょこっとひとこと

10月にノーベル文学賞が発表されました。今年の授賞者はカズオ・イシグロ氏です。イシグロ氏は1954年長崎市生まれ。5歳の時、海洋学者の父が英国政府に招かれたのを機に家族で渡英。82年にイギリスに帰化しており、現在はロンドン在住。81年から執筆活動を始め、89年に発表した「日の名残り」で世界的に権威のある文学賞の一つ英国のブッカー賞を受賞。同作は93年に英米合作で映画化されました。2005年に出版した「わたしを離さないで」は、英国で映画化されたほか、日本でも2016年にドラマ化されています。カズオ・イシグロ氏の作品をご紹介します。いずれもサピエ図書館に所蔵しています。

 

. 浮世の画家

 

戦時中、日本精神を鼓舞する作風で名をなした画家の小野。多くの弟子に囲まれ、大いに尊敬を集める地位にあったが、終戦を迎えたとたん周囲の目は冷たくなった。弟子や義理の息子からはそしりを受け、末娘の縁談は進まない。小野は引退し、屋敷に篭りがちに。自分の画業のせいなのか。老画家は過去を回想しながら、みずからが貫いてきた信念と新しい価値観のはざまに揺れるウィットブレッド賞に輝く著者の出世作。

2.日の名残り

 

品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々・・過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。

. 充たされざる者

 

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り。実験的手法を駆使し、悪夢のような不条理を紡ぐブッカー賞作家の問題作。

. 夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語

 

ベネチアのサンマルコ広場を舞台に、流しのギタリストとアメリカのベテラン大物シンガーの奇妙な邂逅を描いた「老歌手」をはじめ、切なくロマンチックな調べを奏でる5つの連作短篇集。

5.忘れられた巨人

 

老夫婦は息子との再会を信じて、長年暮らした村を後にする。さまざまな人々に出会いながら荒れ野を渡り、森を抜け、謎の霧に満ちた大地を旅するふたりを待つものとは。失われた記憶や愛、戦いと復讐のこだまを静謐に描く。

6.わたしを離さないで

 

全寮制施設に生まれ育ったキャシーは、今は亡き友人との青春の日々を思い返していた。奇妙な授業内容、教師たちの不思議な態度、キャシーたちがたどった数奇で皮肉な運命。彼女の回想は施設の驚くべき真実を明かしていく

7.わたしたちが孤児だったころ

 

1900年代初め。上海の租界で暮らしていたクリストファー・バンクスは両親の謎の失踪により10歳で孤児となった。イギリスに戻り、成長して探偵になった彼は、日中戦争が勃発し混迷をきわめる上海へ舞い戻るが

 

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