帰宅の途

 

佐賀県立点字図書館
館長  田中 真理

 

 

  

 点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 今年の夏はオリンピック・パラリンピックに大雨に新型コロナと、怒涛の勢いでした。
 8月に入ってから梅雨の雨の少なさを取り戻すかのように雨が降り続き、お盆についに決壊してしまいました。大雨特別警報と周囲の冠水などもあり、8月14日は点字図書館も臨時休館となりました。幸いにして現在の建物や建設中の建物内部への浸水などはありませんでしたが、武雄市、大町町、佐賀市などを中心に多数の浸水や土砂災害が発生しました。被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。
 一昨年の佐賀豪雨の際、「数十年に一度の大雨」と言われ、大雨特別警報が出ていました。去年は熊本の方で豪雨災害があり、数十年に一度、といってもそうではないとは感じていましたが、わずか2年で更なる大雨となり、自然の脅威とはかくも、とまさに天を仰ぐ思いです。この先は穏やかな天候であってほしいと、切に願ってやみません。
 また、新型コロナウイルスの感染拡大が全国的に深刻になっております。9月現在、佐賀でも感染者は連日50人以上、自宅療養者も3ケタ、唐津市はまん延防止等重点措置の適用と、予断を許さない状況が続いています。点字図書館では感染予防の観点から、ボランティアの活動や運営委員会などをしばらく中止といたしました。職員は出勤しており、貸出などは通常通り行っておりますが、今後の国や県の方針によっては、サービスの停止や臨時休館等をお知らせすることがあるかもしれません。ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

 さて、業務を終えて帰宅する際、自宅は図書館からみて西北西にあたるため、よく太陽が沈むのを眺めながら帰っています。その時、とても面白くて毎日眺めても飽きないのが雲です。先日、もう残照も残りわずかという時間に帰っていたのですが、ふと、西の雲が空よりも暗い色になっていることに気がつきました。雨雲でもないのに、なぜ? 不思議です。夜になると、雲の方が白く浮かび上がるのに。調べてみると、どうも光の量が関係しているらしいとのこと。日が沈んで反射する光の量が減ると暗く見え、夜は月の光を反射してまた白く見えるようです。ちなみに雨雲が黒っぽいのは、雲が厚くて光の勢いが弱まってしまうからだそう。なるほどなるほど。雲の色と光の関係、学生時代に習ったような気もするのですが、すっかり忘れてしまったようです。
 この原稿を書いている今は、まだまだ夏の質感溢れる雲ですが、この通信がお手元に届く頃には、秋の空に細くたなびく雲が見えるようになっているかもしれません。秋の空は、風の流れがそのまま映し出されているようなこれまた素晴らしい景色なので、今から出会えるのが楽しみです。
 不安な気持ちで見上げることも多いですが、興味尽きぬ存在であることも実感させられる帰りの空なのです。

 


                                

 

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