新しい秋の始まりに

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

  点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。残暑厳しき折、ご自愛くださいますよう祈念申し上げます。
図書制作の第一段階で、ボランティアの方々が点訳・音訳する予定の図書を選んでこられます。それら原本の様々なタイトルを眺めていて、こういう本をよく探してこられたなと感心したり驚かされたりします。
図書館や本屋さんの本棚の前に立つと、あふれるような本や雑誌に圧倒されてしまいます。インターネットで検索していると、誘惑に負けて必要のない本まで何故か買ってしまいます。そんなこんなで、机やいすの周りには本が散乱して、断捨離なんて永遠に来ないと思えるような有様です。本当に読みたい本と出会うというのは、なかなか難しくかつ大変なことのようです。
以前は本好きな人が色々と教えてくれたものですが、最近では、新たな本探しのきっかけも増えています。午前4時過ぎのラジオ深夜便に、「明日への言葉」というコーナーがあります。何ともユニークな人物が登場して、目の覚めるようなお話を展開してくれます。読みたい本との出会いが、早朝に始まるようになりました。以下、印象に残った人々とその著書を拾い上げてみました。
近藤雄生(こんどう ゆうき)著『遊牧夫婦 はじまりの日々』の前書きは、こんな始まりです。「旅の中を生き続けたい。そう思い、結婚直後に仕事はないまま、僕らは二人で旅に出た。旅をしながら、住んで、学んで、働いて。五年におよんだそんな『遊牧』の日々の中で、僕らは確信した。そう、いまは、旅が暮らしになる時代なんだ、と―。」。次のページには、オーストラリアとユーラシア大陸、そしてアフリカの地図に、2003年から2008年までの旅のルートが描かれています。
地図の専門家である田代博(たしろ ひろし)さんの著書は、『地図がわかれば社会がわかる』。「ハザードマップを見ながら現地を歩き、地域の実態を体感しておこう」という冒頭の文句に納得でした。
山口仲美(やまぐち なかみ)著『すらすら読める今昔物語集』には、古典文学に描かれた元気な人々の姿があふれています。『大学教授がガンになってわかったこと』も読んでみたいと食指が動きます。
評論家川本三郎(かわもと さぶろう)さんが語る永井荷風のこと散歩のことも心に残って、本棚から『荷風好日』や『断腸亭日乗』を引っ張り出してくることになります。
 「以上はあくまでも個人的な感想です」ので、あなたと出会いたがっている本たちがいることを信じて、図書館に何なりとご相談くださいますようお願いいたします。
8月1日付でお知らせいたしましたように、9月1日から30日まで点字図書館の貸出業務等を休止いたします。皆さまには多大なご迷惑をおかけすることをお詫び申し上げます。次の点字図書館通信の発行予定は、11月1日です。点字図書館の改築工事に伴って南側の総合保健会館へ引っ越してあたふたと業務を行っているかもしれません。
令和の秋を心静かに味わいたいものと願っておりますが、いかがなりますでしょうか。
皆さま方のご健勝を祈念申し上げます。

 



 


                                

 

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