新たな時代の歩みが…

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

  寒の戻りや春の嵐を乗り越えて、春の陽光に心まで満たされるような4月です。点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。新たな年度も、なにとぞよろしくお願いいたします。
 昭和47年、点字図書館は開館し47年の歳月を積み重ねてきました。平成28年度に設置された「佐賀県立点字図書館のあり方検討委員会」において、4回の協議を経て29年3月に「報告書」がまとめられました。報告を受けて、平成30年度には「佐賀県立点字図書館基本構想」が策定され、新年度から「新たな点字図書館」への歩みが始まることになります。平成から新たな元号への移り変わりや2020年東京オリンピック・パラリンピックを含めた2年ほどの間に、現在の図書館から移転先への引っ越し、図書館の取り壊しと新たな建物の建設、移転先からの引っ越しと新たな図書館の開館と、めまぐるしく動いていくものと思われます。移動や業務環境の変化等により、利用者やボランティアの皆さまにはご迷惑をおかけすることも考えられますが、影響を最小限に留めつつ業務を行なっていきたいと存じておりますので、ご理解とご協力のほどお願いいたします。
 点字図書館が開館した昭和47年という年は、どんな年だったのでしょう。先月まで放映されていたNHK朝の連続ドラマ「まんぷく」との関連でみると、「カップめん」が爆発的に売れ始めた年でした。2月に長野県軽井沢町で起こった「あさま山荘事件」で、警備の機動隊員たちがカップめんを食べる場面がテレビで中継されたことによって、知名度が一気に高まったと言われています。5月には、沖縄が日本に返還され「沖縄県」が発足しました。その秋、中国との間で国交正常化の共同声明が発表され、その記念にジャイアントパンダのカンカン・ランランが上野動物園にやって来ました。振り返ると、あっという間のことのように思えます。
 友人に視覚障がい者の弁護士がいます。今も、東京足立区で地域に密着した弁護士として活動しています。高校で彼と机を並べていた頃、点字図書館はまだ存在していませんでした。横断歩道に音楽や鳥の鳴き声もありませんでした。「信号が見えてないのに、どうして横断歩道を渡れるの」と、彼に聞いたことがありました。「周りの人の動きに合わせて渡っているから」と、笑って答えてくれました。高校卒業後に佐賀の地を離れ、国立国会図書館のテープ図書を借りたりして法律を学んだということでした。歴史に「たら・れば」はないといいますが、半世紀前、点字図書館が存在していたら、友人をどのように支えることが出来たのだろう、などと考えてみたりします。
 新たな時代の点字図書館の歩みが始まろうとしています。今後とも、皆さま方のご支援とご協力とをお願いいたします。

 



 


                                

 

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