師走に思う

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 師走を迎え、何とはなしにあわただしい思いにかられてしまいます。さまざまな自然災害に翻弄された平成30年も最後の月となりました。利用者及びボランティアの皆さまにおかれましては、この一年いかがだったでしょうか。本年中に賜りました皆さまのご支援ご協力に厚く御礼申し上げます。
今年の秋、私にとっては学びの季節でした。テーマは、児童虐待、音訳、視覚障害リハビリテーション、新潟の良寛さんや信濃川、サピエのこれから、幕末維新期の佐賀等など、2か月の間に様々なお話を頭からあふれるくらいに聞かせてもらいました。
 〇虐待を受けた子どもたちの中に、食事が温かいことを知らない子がいた。
 〇若者の音訳グループを作って行きたい。
 〇点字は考えながら読むことが出来る。目は疲れるが点字は疲れない。
 〇良寛さんと手まりをついて遊んでいた子どもたちには、過酷な運命が待っていた。信濃川の氾濫で年貢が収められなくなった村の子どもたちは、故郷を離れて奉公に出され戻ってこなかった。
 〇信濃川の治水工事の碑文には、「万象の中に天意を覚る者は幸いなり」と刻まれていた。
 〇雨の音が聞こえる  雨が降っていたのだ  あの音のようにそっと世のために はたらいていよう  雨があがるように しずかに死んでいこう (雨 八木重吉)
 〇サピエの課題は、提供時間の短縮、音訳図書の質の向上及び個別ニーズへの対応である。
 〇幕末期の佐賀の素晴らしさは、国のために一丸となって無駄な回り道を厭わなかった点にある。
多彩な場面で出会ったのは、以上のような言葉たちでした。
秋も深まるとマラソンのシーズンです。11月上旬、熊本県和水町(なごみまち)で金栗四三(かなくりしそう)翁マラソン大会がありました。金栗さんは明治生まれのランナーで、日本における「マラソンの父」とも呼ばれ、来年1月から始まるNHK大河ドラマ「いだてん」のモデルとされている方です。今回からマラソンコースが変わり、金栗さんの生家前を通り過ぎると「いだてん坂」が待っていました。小学生だった金栗さんは、毎日往復12キロの道のりを走って通われたそうで、往時を偲びつつ走らせてもらいました。
そうこうしているうちに歳も暮れて行きます。
少し早いようですが、皆さまの新たな年のご多幸を心よりお祈り申し上げます。
時節柄、くれぐれもご自愛くださいますようお願いいたします。

 



 


                                

 

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