先達はあらまほしき事

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 立秋を過ぎてもまだまだ暑い季節、利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 慣れないことや分からないことに直面した時、ガイドという存在はとても頼りになります。以前、屋久島の宮之浦岳(標高1,936М)や富士山(標高3,776М)に登った時に山岳ガイドのお世話になりました。登山ルートの案内はもとより、登山者の体力や疲労度などを見極めながら、登る速度を加減したり休憩を入れたりと、きめ細かな対応をしていただいて山を楽しむことが出来ました。
 6月初旬、ふとしたことから歌舞伎を見ることになりました。実物を鑑賞するのは生まれて初めてというので、劇場で借りたレシーバーで音声解説を聞きながら歌舞伎を見ました。「十倍楽しめた」とまでは言えませんでしたが、大事なせりふや見落としがちなところを教えてもらえました。その勢いで、テレビでやっていた歌舞伎「仮名手本忠臣蔵」に挑戦してみました。テレビのリモコンの音声切換えを「副音声」にすると、劇場の時と同じように、役者の表情や所作や服装など、いろんな解説が聞こえてきました。
 そんなこんなで、教えられることやや助けてもらうことの喜びを味わえました。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」、簡単なことでも指導者というものは必要なのだと、「徒然草」は教えてくれていました。
 若者が旅にあこがれる時、小田実とか沢木耕太郎という旅の先達がいました。「『何でも見てやろう』『深夜特急』につづく旅文学の新たな金字塔」、こんなキャッチコピーに魅せられて、佐藤優の「十五の夏」を読み始めました。今から43年前、高校一年の夏休み、ソ連と東欧を一人旅した著者の40日間の旅行記。若者の初々しさに、猛暑日も熱帯夜も吹っ飛んでしまいました(個人的な感想です)。
 暑さの中に「今朝の秋」も見え始める季節、くれぐれもご自愛くださいますようお願いいたします。

 



 


                                

 

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