二月の光の中で

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 春が待たれる今日この頃、利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
「明けましておめでとう」から1ヶ月が経ちますが、皆様のお正月は、いかがでしたでしょうか。ちなみに、私の元旦は、「第41回新春五社参り・走ろう、歩こう会」から始まりました。佐賀県庁前で佐賀弁バージョンのラジオ体操で体をほぐした後、佐嘉神社、松原神社、八幡神社、護国神社、與賀神社の順に五つの神社を約三十分走ってお参りしてきました。駆け足でしたので、願いが聞き届けられたかどうかは、神様だけがご存知なのでしょうか。
二日は、「読み初め」の本を買いに本屋さんに行きました。つばた英子・しゅういち著「きのう、きょう、あす。」を、昨年見た映画「人生フルーツ」のご縁で買って読み始めました。本の後ろの方に番外編があって、伊万里市内の医療福祉施設「まちさな」が紹介されていました。建築家だったしゅういちさんが、最後の仕事として設計したのが「まちさな」でした。つばた家と同じように、施設も自然とともにあり、キッチンガーデンにはイラスト入りの野菜の名札がかかっていました。そして、読み初めの第二弾は、「世界一美味しい煮卵の作り方」。「ふむふむ、これなら簡単に作れそう」などと眺めて暮らしています。
 その後、小さな旅に出る時に持って行った本は、最近のベストセラー「君たちはどう生きるか」の著者吉野源三郎が、雑誌編集者として書いた「編集後記」を集めたものでした。戦後の激動期の文章を集中して読んでいたら、電車の揺れが心地よくて眠ってしまいました。八十年以上前の「君たちはどう生きるか」が、漫画で読めるようになったことを喜ぶべきなのかどうか、うたた寝の中で思っていました。
 昨年は、新聞や週刊誌の連載小説をよく読んでいました。佐賀新聞連載の植松三十里作「かちがらす」は、1月5日、幕末の佐賀藩主鍋島直正の死をもって最終回となりました。これまで、ボランティアさんによって20回分ずつ点訳が進められてきましたが、今後は、単行本の刊行を待って点訳図書・音訳図書の製作に移っていく予定です。週刊誌では、昨年1月、「新 青春の門 第九部 漂流編」の連載が再開されました。その舞台はロシア、東京、博多、伊吹信介と牧織江の物語が進行していて目が離せません。著者の五木寛之は85歳、まだまだ頑張っておられます。 
 二月の陽射しの中、かすかに春の足音が聞こえてきます。
千手仏手をみなひろげ春を待つ(小林鹿郎) 



 



 


                                

 

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