秋風の立つ頃

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 炎暑の夏が過ぎ、青空に爽やかな雲がたなびく季節を迎えています。今年の夏も、あれやこれやと深い印象を残して去って行きました。
利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまに、心から感謝申し上げます。
 8月11日夕方、お住まいをお訪ねすると、橋本ゆかりさんは、「まあ、お久しぶり」と眼を細めて迎えてくださいました。それより1か月ほど前、お誕生日に伺った時は、「私、102歳にもなったの」と、まるで他人事のように驚かれ、バラの花が立体的に見えるカードのプレゼントを喜んでくださいました。
そして、8月17日、点字図書館の開館以来の音訳ボランティアで、点字図書館友の会の三代目会長であった橋本ゆかりさんは、天に召されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
五十代から始められたボランティア活動は、製作図書456タイトル、校正図書670タイトルに達しました。お亡くなりになった後で、彼女の出身校の教育理念に「共同奉仕」という言葉があることを知りました。彼女の活動を振り返る時、クリスチャンとしての使命感、より良い社会をつくるための連帯感が、その根底にあったように思われます。ご遺族の呼びかけで、橋本ゆかりさんとのお別れ会が10月9日に開催されますので、有志の方々と集いご遺徳を偲びたいと思っています。
 お伝えしていますように、10月29日(日)、本年度の読書会を予定しています。講師は、深川勝郎(ふかがわ かつろう)さんです。2010年、佐賀市金立町に古民家を改修して「竹林清風亭」と名づけて住んでおられます。著書「佐賀駅上りホーム」に描かれた昭和の子ども時代や青春時代の懐かしい佐賀の風景、本を書くことの大変さや楽しさ等、本を読む楽しさを越えたお話が伺えたらと思っています。多数のご参加をお待ちしております。
 10月も下旬ともなれば恒例の読書週間、今年の標語は「本に恋する季節です!」。しかし、春先には「もし、読書をしなければいけない確固たる理由があるならば教えて頂きたい」という新聞の投書が話題になったり、昨今は本屋が一軒もない市や町が増えていたりと、読書を取り巻く環境も波乱に富んでいます。
 灯火親しむの候、点字図書館に関わっていただいている皆様には、心おきなく読書を楽しんでいただけたらと願っております。

 



 


                                

 

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