夏に向かう季節の中で

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまに、心から感謝申し上げます。
 「山が笑う」とたとえられる季節、稀に「レンゲ畑」に出会います。電車や車の窓に、レンゲの赤いじゅうたんが見えると、なぜか幸せな気分になります。私が子どもだった頃、レンゲ畑はどこにでもある春の風景だったのに、今では珍しい。化学肥料が普及するにしたがって、窒素肥料となっていたレンゲも栽培されなくなったみたいです。今年は、1週間以上桜の開花が遅かったといわれました。その代わり、小学校や中学校の入学式は、桜の花に祝福してもらえました。桜と同様、少し遅れたタケノコを里山に掘りに行ったのですが、一番おいしそうなタケノコは、イノシシに食べられたあとでした。竹林を吹き過ぎて行く風が、春から夏への変わり目を教えてくれました。
 天候が順調で農作物に都合が良いことを「五風十雨」といい、五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降ることとされています。自然の中で生きる様々な生物の姿にふれる時、「力強い生きかた」、「支え支えられて生きている」、そんな思いがわいてきます。畑でいろんな野菜を育てていて、「雑草って何なのだろう」と思ったことがありました。そこから、稲垣栄洋(いながき ひでひろ)著「身近な雑草の愉快な生きかた」に出会い、「散歩が楽しくなる雑草手帳」に教えられることになりました。可憐な花なのに「オオイヌノフグリ」だったり、改名を届け出たくなるような「ハキダメギク」だったり、名前も姿もさまざまな雑草ですが、厳しい競争の中を生き延び、そして子孫をしっかり残していく雑草の生き方に、何故か感動すら覚えてしまいます。暑からず寒からずの季節、野辺に里山に自然の息吹を味わってみてはいかがでしょう。
 この図書館通信の発行日、6月1日は「電波の日」です。その日、先端的、独創的な研究で情報通信の発展に貢献した個人に、「志田林三郎賞」が贈られるそうです。志田林三郎という人は、多久市の出身で明治時代に電信事業や電気事業の基礎を築いたとされています。彼は、明治21年の電気学会の設立記念の演説で、将来実現するであろう技術について語っています。遠隔地との通信通話、海外からのラジオ実況放送、電車や飛行機、テレビ、テープレコーダー等など、彼の予言から130年ほどの間にほぼ実現されていて、「地震予知」が大きな課題として残されています。

 


                                

 

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